M&A仲介とFAの違い|手数料と役割を比較

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「M&A仲介会社に相談したいが、FAとどう違うのか?」——会社売却を検討し始めた経営者から、この質問を受けることが非常に多い。どちらも”M&Aをサポートするプロ”であることは間違いないが、その役割・立場・手数料の構造は根本的に異なる。この違いを理解せずに相談先を選ぶと、後悔することになりかねない。

私はM&Aアドバイザーとして10年以上、数十件の中小企業の売却・買収を支援してきた。仲介側にいた時期も、FA側で動いた経験もある。本記事では、その両面からの実務経験をもとに、仲介とFAの違いを徹底解説する。あなたの会社売却で最適なパートナーを選ぶための判断軸として、ぜひ役立てていただきたい。

目次

M&A仲介とFA(フィナンシャルアドバイザー)の定義

M&A仲介会社とは

M&A仲介会社は、売り手と買い手の双方を代理する立場でM&Aをサポートする会社だ。一社の仲介会社が、売却希望の経営者(売り手)と、買収候補の企業(買い手)の両方から手数料を受け取り、取引を成立させることを目的としている。

日本では日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライクなどが代表的な仲介会社として知られている。中小企業M&Aの多くがこの仲介方式で行われており、日本の中小M&A市場では主流の形態だ。

FA(フィナンシャルアドバイザー)とは

FA(フィナンシャルアドバイザー)は、売り手または買い手のどちらか一方の利益のためだけに動く専任アドバイザーだ。売り手FAなら「いかに高く売るか」、買い手FAなら「いかに安く買うか・リスクを抑えるか」という立場で交渉に臨む。

FAは主に証券会社(野村證券、三菱UFJモルガン・スタンレーなど)や独立系のブティック型FAが担う。大型案件(数十億円以上)では、売り手側・買い手側それぞれにFAがつくことが一般的だ。近年は中小規模案件にも対応する独立系FAが増えており、選択肢は広がっている。

仲介とFAの違いを6つの観点で比較

🔍 仲介とFAの違いを6つの観点で比較のポイント比較

メリット

  • 譲渡価額1億円未満の小規模案件:仲介会社が主流。FAはこの規模を受けないことが多い。
  • 1億〜10億円の中小規模案件:仲介会社と独立系FAの両方が対応可。選択肢が最も広い層。

デメリット

  • 10億円以上の案件:証券会社系FAや大手ブティックFAが対応。入札プロセス(ビディング)を活用するケースも増える。
比較項目 M&A仲介 FA
代理する立場 売り手・買い手の双方 どちらか一方のみ
手数料の支払元 売り手・買い手の両方 依頼した一方のみ
利益相反 構造的に生じやすい 生じない(専任のため)
対象案件規模 中小企業(〜数十億円) 中〜大型(数十億円〜)
交渉スタンス 中立的(双方合意を重視) 依頼者側の利益最大化
情報管理 仲介会社に委ねる部分が多い 売り手FAが段階的に管理

①立場と利益相反のリスク

仲介方式の最大のリスクは利益相反だ。仲介会社は売り手・買い手の双方から手数料を受け取るため、どちらかの利益を優先すると、もう一方の利益が損なわれる構造になっている。

実務でよく見られるのが、仲介担当者が「早く成約させたい」という動機から、売り手に対して本来の相場より低い価格を受け入れるよう促すケースだ。「買い手はこれ以上は難しいと言っています」という言葉だけで、根拠を示さずに値下げを促されたという経営者の話は、業界内では珍しくない。

一方、FAは依頼した側の利益のためだけに動くため、利益相反は構造的に起きない。売り手FAなら「できるだけ高く売る」という一点に集中でき、経営者の立場で価格交渉に臨める。

②手数料の仕組みと相場

手数料の仕組みも大きく異なる。

仲介方式の手数料は、売り手・買い手の双方から成功報酬を受け取る。売り手側の手数料は「レーマン方式」に基づき、成約価格の3〜5%程度が目安だ(最低手数料が500万〜1,000万円程度に設定されていることも多い)。着手金(50万〜200万円)や月額顧問料(10万〜30万円)が別途かかるケースもある。

FA方式の手数料は、依頼した側(売り手または買い手)が負担する。料率は仲介より高くなりやすいが(成約金額の1〜3%程度)、入札競争によって売却価格が想定比10〜20%高くなることもあり、FAフィーを差し引いても手取りが増えるケースは少なくない。

費用比較の目安として、譲渡価額3億円の案件を例に取ると以下のようなイメージだ。

費用項目 仲介(売り手負担分) FA(売り手負担)
着手金 100万〜200万円 100万〜300万円
月額顧問料(6ヶ月想定) 60万〜180万円 60万〜180万円
成功報酬(3億円×4%目安) 1,200万円前後 900万〜1,500万円

※上記はあくまで目安。各社の料金体系によって大きく異なる。

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③対象となる案件規模

現実的には、案件規模によって選択肢が絞られる。

  • 譲渡価額1億円未満の小規模案件:仲介会社が主流。FAはこの規模を受けないことが多い。
  • 1億〜10億円の中小規模案件:仲介会社と独立系FAの両方が対応可。選択肢が最も広い層。
  • 10億円以上の案件:証券会社系FAや大手ブティックFAが対応。入札プロセス(ビディング)を活用するケースも増える。

中小企業オーナーが個人で会社を売る場合、現実的な選択肢は「仲介会社」か「独立系の小規模FA」に絞られることが多い。自社の規模感を把握した上で、まず複数社に問い合わせてみることをお勧めする。

④交渉スタンスの違い

仲介会社は”橋渡し役”として双方に中立的なスタンスをとるため、価格交渉で強く押すことが構造的に難しい。売り手が希望価格を主張しても、「買い手側はこれ以上は難しいと言っています」と板挟みになりやすい。実務の現場では、こうした場面が繰り返されることで、売り手が本来より低い価格を「妥当な相場」と誤認してしまうことがある。

FAは純粋に依頼者の代理人として交渉するため、買い手との価格交渉で強気の立場をとることができる。入札形式を採用して複数の買い手候補に競わせるなど、売り手有利な仕組みを設計することも可能だ。交渉局面での心強さは、FAの大きなアドバンテージと言える。

⑤情報管理と秘密保持

仲介会社を使う場合、売り手の詳細情報(決算書・顧客リストなど)が仲介会社を通じて複数の買い手候補に開示される。仲介会社がどの買い手候補にどこまで情報を開示するか、売り手側がコントロールしにくい面がある。

FAを使う場合、情報開示のタイミングと範囲を売り手FAが厳密に管理する。NDA(秘密保持契約)の締結確認や、開示情報のレベル管理(ティーザー→IM→詳細DD)を段階的に行うことができる。情報漏洩による取引先・従業員への影響を最小化したい経営者には、FAの方が安心感があるだろう。

⑥スピードと手続きの効率

仲介会社の強みのひとつは、買い手候補の開拓力と手続きの一気通貫対応だ。大手仲介会社は数千社〜数万社の買い手候補データベースを持っており、マッチングのスピードが速い。手続き全体を一社に任せられる安心感も、特に初めてM&Aに取り組む経営者には大きなメリットだ。

FA方式では、FAは買い手の開拓も行うが、仲介会社ほど広いネットワークを持っていないケースも多い。その分、ターゲットを絞った質の高いアプローチが得意な傾向がある。買い手候補の開拓に不安がある場合は、FAを選ぶ際にネットワークの規模も確認しておくべきだ。

中小企業オーナーはどちらを選ぶべきか?

結論から言うと、多くの中小企業オーナーにとっては仲介会社が現実的な選択肢だ。ただし、選ぶ際には以下の点を意識してほしい。

仲介会社を選ぶべきケース

  • 譲渡価額が5億円以下の案件
  • 買い手候補の開拓力を重視したい
  • M&A手続き全体を一社に任せたい
  • 費用を抑えたい(着手金・月額費用が少ない会社を選ぶ)
  • M&Aの経験がなく、プロセス全体をガイドしてほしい

仲介会社を使う場合でも、利益相反リスクを最小化するための工夫が必要だ。複数の仲介会社に相談して相場観を養う、提示された価格の根拠を徹底的に確認する、専属契約期間を短く設定する(3〜6ヶ月程度)、などが有効だ。また、企業価値評価(バリュエーション)の算出根拠を書面で提示してもらうことも交渉力を持つ上で重要だ。

FAを選ぶべきケース

  • 譲渡価額が5億円を超え、高値売却を狙いたい
  • 複数の買い手候補に競わせる入札形式を希望する
  • 複雑なスキーム(MBO・事業譲渡・カーブアウトなど)が絡む
  • 売り手側の利益を100%代弁する交渉人が欲しい
  • 上場企業や同業大手への売却を想定しており、交渉力が必要

FAを使う場合は、費用が高くなる覚悟が必要だ。ただし、入札競争によって売却価格が想定より高くなることも多く、FAフィーを差し引いても手取りが増えることは珍しくない。費用対効果を試算した上で選択することが重要だ。

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仲介とFAを「組み合わせる」という選択肢

近年、中小規模案件でも「弁護士や税理士にFA的な役割を担ってもらいながら、仲介会社を使う」という折衷案を取るオーナーが増えている。

具体的には、M&A仲介会社に買い手候補の開拓と手続き全体を任せつつ、顧問弁護士や税理士に契約書チェック・価格交渉のアドバイスを依頼する形だ。この場合、弁護士・税理士は売り手側の立場で動くため、利益相反リスクを一定程度軽減できる。

ただし、この方法は関係者が増えることで意思疎通が複雑になるデメリットもある。依頼する専門家には、M&A案件の経験があることを必ず確認すること。一般的な法律・税務のプロであっても、M&A特有の交渉・契約実務に不慣れな場合は逆効果になることもある。

よくある質問(FAQ)

Q. 仲介会社とFAに同時に相談することはできますか?

A. 技術的には可能だが、多くの仲介会社は「専属契約」を求めるため、契約期間中は他社への相談が制限される。専属期間が終了した後に別のFAに相談する、あるいは最初から専属縛りのない会社を選ぶという選択肢もある。契約前に専属条項の有無と期間を必ず確認すること。

Q. 仲介会社の担当者がFA的に動いてくれることはありますか?

A. 担当者個人の姿勢によって異なる。ただし、仲介会社という組織の構造上、会社として「売り手側の利益最大化」を優先することには限界がある。優秀な担当者でも、組織の成約インセンティブと売り手の利益が相反する局面では、前者が優先されるリスクがあることを理解しておくべきだ。

Q. FAは小規模案件(1億円以下)でも対応してもらえますか?

A. 大手証券会社系のFAや大手ブティックFAでは、1億円以下の案件を受けないことがほとんどだ。ただし、中小M&A専門の独立系FAや、弁護士・税理士がFA機能を担う形であれば、小規模案件でも対応可能なケースがある。まずは相談してみることが大切だ。

Q. 仲介会社を使って後悔した経営者はどんな点を後悔していますか?

A. 業界でよく聞くのは以下の3点だ。①提示された企業価値評価の根拠を確認せずに「この価格が相場」と信じてしまった、②専属契約期間中に他社の意見を聞けず、比較検討ができなかった、③成約を急かされ、買い手の財務状況や企業文化の確認が不十分なままサインしてしまった。いずれも、事前に知識を持っていれば防げる後悔だ。

まとめ:違いを理解したうえで最適な相談先を選ぼう

M&A仲介とFAの違いをあらためて整理すると以下のとおりだ。

  • 仲介:売り手・買い手の双方を代理。利益相反リスクあり。中小案件に向く。買い手候補の開拓力と一気通貫対応が強み。
  • FA:依頼者一方の利益を代弁。利益相反なし。大型案件・高値売却狙いに向く。交渉力・情報管理力が強み。

どちらが優れているかではなく、案件規模・目標・予算に応じて使い分けることが重要だ。仲介を使う場合でも、利益相反リスクへの対策は怠らないようにしてほしい。提示された価格の根拠を確認し、複数社を比較し、専属契約期間を適切にコントロールすること——この3点だけでも、仲介方式のデメリットをかなり軽減できる。

会社売却は人生で一度あるかないかの大きな決断だ。相談先選びを間違えると、本来受け取れたはずの対価を失うことにもなりかねない。まずは複数の仲介会社・FAに無料相談し、自分の案件規模と目標に合ったパートナーを見つけることから始めてほしい。情報収集の段階でも、各社の対応の質や担当者の姿勢は見えてくる。それ自体が、相談先を見極める重要な判断材料になる。

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この記事を書いた人

M&A仲介実務10年、累計成約60件超。元大手仲介会社シニアアドバイザー。
「経営者の人生に寄り添う」をモットーに、中小企業の事業承継からIPO準備企業のバイアウトまで幅広く支援。業界特化型M&Aに強み。表面的な価格算定だけでなく、オーナー経営者の売却後の資産設計・ライフプランまで見据えた戦略提案を得意とする。

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