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「まずは話だけ聞いてみよう」——そう思って仲介会社の初回面談に臨んだ結果、想定外の方向に話が進んでしまった、あるいは肝心な情報を引き出せないまま終わってしまった、という経営者は少なくありません。
私がM&Aアドバイザーとして10年近く現場に立っていたなかで、売り手側の経営者が最初の面談で「準備不足だった」と後悔するケースを何度も見てきました。初回面談はあくまでも「情報収集の場」であり、売却を決断する場ではありません。しかし、準備の質によって、その後の交渉の主導権を握れるかどうかが大きく変わります。
本記事では、M&A仲介会社との初回面談で失敗しないために、事前に整理・準備すべき5つのポイントを実務目線で解説します。面談に臨む前に、ぜひ一度確認してください。
初回面談の「役割」を正しく理解する
準備の話に入る前に、まず初回面談が何のためにあるのかを整理しておきましょう。売り手経営者の多くは「相談に行く=売却の相談をする」と思っていますが、初回面談の実態は少し異なります。
仲介会社にとっての初回面談
仲介会社の担当者にとって、初回面談は「案件としての可能性を見極める場」です。売り手企業の業種・規模・財務状況・売却理由・希望条件などを聞き出し、「仲介として受任できる案件かどうか」を判断しています。
つまり、仲介会社は最初から「どうすればこの案件を受任できるか」という視点で話を聞いています。これが悪いわけではありませんが、経営者側も同じように「この仲介会社は信頼できるか」「自社のM&Aに適した会社か」を見極める場と位置づけることが重要です。
売り手経営者にとっての初回面談
売り手経営者にとっての初回面談は、以下の3点を確認する場と考えるのが理想的です。
- 自社が売却可能かどうかの感触をつかむ
- 大まかな企業価値の目線を聞く
- 仲介会社の対応姿勢・専門性を評価する
この3点を意識して面談に臨むだけで、質問の質が格段に上がり、仲介会社側から引き出せる情報量が大きく変わります。
初回面談前に準備すべき5つのこと
① 直近3期分の財務数値を頭に入れておく
初回面談では必ずといっていいほど、「売上と利益はどのくらいですか?」という質問が来ます。「決算書を持参してください」と言われることもありますが、持参しない場合でも、口頭で答えられる程度に数字を整理しておくことが必要です。
最低限、頭に入れておきたい数値は以下の通りです。
- 売上高(直近3期)
- 営業利益または経常利益(直近3期)
- 純資産額(直近期末)
- 借入金残高(直近期末)
- 従業員数
なぜこれが重要かというと、仲介会社の担当者はこれらの数値から概算の企業価値を即時に算定しているからです。「売上は10億円くらい、利益は1億円前後です」という程度の感覚値でも構いません。逆に「よく分からない」という回答では、相手から信頼を得にくくなります。
また、オーナー報酬が高く設定されている中小企業の場合、「報酬をどの程度正常化できるか」という論点も出てきます。「社長報酬として年間〇〇万円取っている」という情報も事前に整理しておくと良いでしょう。
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② 売却を考えた「本当の理由」を言語化しておく
初回面談で必ず聞かれる質問のもう一つが、「なぜ今売却を検討されているのですか?」です。この質問は一見シンプルに見えますが、答え方によって面談の方向性が大きく変わります。
売却理由として多いのは以下のようなものです。
- 後継者がいない(後継者問題)
- 業界の先行きに不安がある
- 体力的・精神的に引退したい
- 事業をより大きなプラットフォームに乗せたい
- 個人保証や借入リスクから解放されたい
- 資産を現金化して別の投資に充てたい
ここで注意すべきことがあります。「赤字が続いていて立て直せない」「訴訟リスクがある」「キーマンが近々退職する予定」など、ネガティブな事情は仲介会社には必ず開示すべきですが、初回面談の場で不用意に全部話す必要はありません。信頼関係が構築された段階で順次開示していくのが実務上の常識です。
一方で、「後継者不在」「健康上の理由」といった一般的な理由であれば、正直に伝えた方が仲介会社側も適切なバイヤー探しの方向性を持てます。売却理由は買い手候補への説明にも使われるため、「社外に出しても問題ない言い方」と「仲介会社だけに伝える本音」を分けて整理しておくと面談がスムーズです。
③ 希望売却価格の「感覚値」を持っておく
「いくらで売りたいですか?」——この質問を初回面談で聞いてくる仲介会社は多くあります。この質問に対して、「分かりません」「相場を教えてください」という答えでも問題ありませんが、もし自分なりの感覚値があるなら、それを持った上で臨む方が有利です。
なぜかというと、仲介会社の担当者が提示する「想定レンジ」が、あなたの期待値と大きくかけ離れている場合、その場で気づける可能性があるからです。
中小企業M&Aにおける企業価値の簡易的な目安として、以下のような算式がよく使われます(あくまで概算です)。
- 時価純資産 + 営業権(EBITDA × 3〜5倍程度)
- EBITDA(営業利益+減価償却費)を軸にした倍率評価
例えば、営業利益が年間5,000万円の会社であれば、おおよそ1.5億〜3億円程度の企業価値レンジが一つの目線になります(業種や財務状況によって大きく異なります)。
自社の利益水準から逆算した「最低ライン」と「理想ライン」を事前に持っておくと、面談での価格に関する会話が格段に濃くなります。
④ 「どんな買い手に売りたいか」を考えておく
売り手側が意外と準備できていないのが、「どんな買い手を希望するか」という視点です。M&Aは売却価格だけではなく、誰に・どんな形で引き継いでもらうかという点が、売り手経営者の満足度に直結します。
特に従業員のことを大切にしているオーナーは、買い手の方針や企業文化を重視する傾向があります。初回面談では、以下のような希望を伝えておくと、仲介会社が適切なバイヤー像をイメージしやすくなります。
- 業種の近い戦略的買収を希望するか、ファンドでも構わないか
- 従業員の雇用継続を重視するか
- 自分自身が一定期間会社に残ることを希望するか、否か
- 地域性(地元の会社に買ってほしい、など)
- 競合他社への売却を避けたいか
「誰でもいい、とにかく高く売りたい」という方針もあって当然ですが、そうした優先順位自体を整理しておくことが大切です。この情報は仲介会社がバイヤーリストを絞り込む際に活用されます。
⑤ スケジュール感・タイムラインを持っておく
「いつまでに売りたいか」というスケジュール感も、初回面談で確認される重要な要素です。これが曖昧だと、仲介会社側も優先度をつけにくくなります。
M&Aの標準的なプロセスは、着手から成約まで6ヶ月〜1年半程度かかることが多いです。逆算して考えると、「来年の春には引退したい」というオーナーであれば、「今すぐ着手しないと間に合わない」という緊迫感が生まれます。
一方で、「まだ5年は続ける気があるが、将来的な出口として今から準備しておきたい」という場合は、焦って動く必要はありません。このスタンスの違いによって、仲介会社の動き方も大きく変わります。
スケジュールに明確な答えがなくても、「1〜2年以内」「3年以内」「時期は未定だが早い方が良い」といった大まかな感覚を持って臨むだけで十分です。
初回面談で必ず確認すべき仲介会社への質問
準備ができたら、今度は相手側を評価する番です。良い仲介会社を見極めるために、初回面談では必ず以下の点を確認しましょう。
担当者の業種・規模感の経験値
「弊社の業種でのM&A実績はありますか?」と直接聞くことをお勧めします。仲介会社によっては、特定の業種(医療・介護・IT・製造業など)に強みを持つところと、業種を問わず幅広く扱うところがあります。自社の業種に精通している担当者がいるかどうかは、バイヤー探しの質に直結します。
手数料体系の明確な説明
初回面談の段階で、手数料体系(着手金・中間金・成功報酬)について説明を求めてください。「成功報酬のみ」「最低報酬額あり」など、会社によって大きく異なります。後でトラブルになるケースの多くは、手数料に関する認識のズレから生じます。
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「専任契約」の条件と期間
多くの仲介会社は「専任契約」を求めます。これは一定期間、他の仲介会社へ並行して相談できないという制約です。期間の長さ(3ヶ月〜12ヶ月)と途中解約の条件を必ず確認してください。
「解約できないと聞いていなかった」というトラブルは実際に発生しています。初回面談の段階でこうした条件を確認することで、後々の後悔を防げます。
マッチングの方法(クローズドか公開か)
買い手探しの方法として、仲介会社が持つ「クローズドな買い手リスト」に直接アプローチする方法と、M&Aマッチングサイトにノンネームで案件を掲載する方法があります。情報漏洩リスクの観点から、「どの範囲まで情報が出るのか」を確認しておくことは非常に重要です。
初回面談でやってはいけない3つの行動
① 感情的にすべてを話しすぎる
売却を考えているオーナーの多くは、それまで誰にも打ち明けられなかった悩みや不安を抱えています。初めてプロに相談できる場として、つい感情的に話しすぎてしまうことがあります。
しかし、初回面談の段階では、信頼関係がまだ構築されていません。特に「業績が悪化している」「社内に問題を抱えている」「キーマンが来月退職する」といったネガティブな情報は、相手の評価基準を下げるだけでなく、その後の交渉で弱みとして使われるリスクがあります。仲介会社との信頼関係が深まった段階で、段階的に開示していくのが賢明です。
② その場でサインしない
初回面談の場で、専任契約書への署名を求められることがあります。「今日決めれば条件を良くします」「他にも相談者が並んでいます」などのクロージング圧力をかけてくる担当者もいます。
しかし、契約書は必ず持ち帰り、冷静に読み込んでからサインするのが原則です。焦って契約した結果、思わぬ条件が含まれていたというケースは現実にあります。「一週間以内に返事をします」と伝えることに遠慮は不要です。
③ 1社だけで判断しない
初回面談は複数社に並行して依頼することが可能です(専任契約を結ぶ前の段階)。仲介会社によって、提示する企業価値の目線・手数料・担当者の専門性は大きく異なります。少なくとも2〜3社の話を聞いてから、正式に依頼する会社を選ぶことをお勧めします。
「良い担当者に出会えるかどうか」はM&Aの成否を左右する大きな要素です。初回面談の場での担当者の態度・回答の質・業界知識の深さをしっかりと観察してください。
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初回面談後に確認すること
💡 初回面談後に確認することのポイント
面談が終わったら、その日中に以下の点をメモしておくことをお勧めします。
- 担当者が提示した企業価値の目線と根拠
- 仲介会社が得意とする業種・規模感の感触
- 手数料体系(着手金・成功報酬の具体的な数字)
- 専任契約の期間と解約条件
- 担当者の第一印象(誠実さ・専門性・傾聴姿勢)
複数社を比較する際に、後から「あの会社は何と言っていたか」が曖昧になることが多いです。面談直後にメモを残す習慣をつけておくと、最終的な選択の精度が上がります。
まとめ:初回面談は「売却の第一歩」ではなく「情報戦の第一歩」
M&A仲介会社との初回面談は、「売却を依頼するかどうか決める場」ではなく、「自社のM&Aに必要な情報を集め、相手を見極める場」です。この認識の違いが、その後の交渉をどれだけ有利に進められるかを大きく左右します。
準備すべき5つのポイントを振り返ります。
- 直近3期分の財務数値を頭に入れておく
- 売却理由を言語化しておく
- 希望売却価格の感覚値を持っておく
- どんな買い手に引き継いでほしいかを考えておく
- スケジュール感・タイムラインを整理しておく
これらを準備した上で初回面談に臨むと、担当者との会話の質が明らかに変わります。相手から引き出せる情報が増え、仲介会社の実力や適性を正確に判断できるようになります。
M&Aは経営者にとって一生に一度の大きな決断です。最初の一歩を焦らず、準備を整えてから踏み出してください。仲介会社の選び方や相談の進め方について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてご参照ください。

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