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「M&Aで会社を売却できた。でも、その後の確定申告って自分でできるのか……?」
M&Aアドバイザーとして多くの中小企業オーナーの売却を支援してきた中で、クロージング直後にこういった不安の声を聞くことは少なくありません。M&Aの交渉や手続きに全力を注いできたオーナーにとって、売却後の税務処理は「あとはなんとかなる」と後回しにされがちです。ところが、確定申告の手続きを誤ると、払わなくてよい税金を払ったり、逆に申告漏れで追徴課税を受けたりするリスクがあります。
この記事では、M&Aにおける株式譲渡後の確定申告について、譲渡所得の計算方法から申告手順、必要書類5点、よくある失敗事例まで、実務経験に基づいて丁寧に解説します。売却完了を間近に控えた方も、すでに売却を終えた方もぜひ参考にしてください。
M&A株式譲渡後に確定申告が必要な理由
まず大前提として、株式譲渡による売却益(譲渡所得)が発生した場合は、原則として確定申告が必要です。給与所得や事業所得と異なり、株式の譲渡所得は「申告分離課税」という制度が適用されます。これは、他の所得と分けて別途税額を計算し、申告する仕組みです。
「会社の顧問税理士に任せているから大丈夫では?」と考える方もいますが、注意が必要です。顧問税理士が対応しているのは法人側の申告であることが多く、個人の株式譲渡所得については別途対応が必要なケースがほとんどです。売却後は早めに確認しておきましょう。
また、M&Aによる株式売却は通常の上場株式売買と異なり、証券会社を通じた特定口座での取引ではありません。そのため、源泉徴収が自動的に行われる仕組みがなく、オーナー自身が申告して納税する必要があります。この点を見落として申告が遅れるケースが散見されます。
株式譲渡益(譲渡所得)の計算方法
📋 株式譲渡益(譲渡所得)の計算方法の流れ
確定申告の出発点は、譲渡所得の正確な計算です。計算式自体はシンプルですが、各項目の内容を正しく理解していないと誤りが生じます。
譲渡所得の基本計算式
株式譲渡所得の計算式は以下のとおりです。
譲渡所得 = 譲渡対価(売却金額)- 取得費 - 譲渡費用
- 譲渡対価:買い手から受け取った株式の売却金額。アーンアウト条項がある場合は、確定した金額のみが対象となります。
- 取得費:株式を取得したときにかかった費用。創業者の場合は出資額(資本金)が基本となります。
- 譲渡費用:株式の売却に直接要した費用。M&A仲介会社やFAへの手数料、弁護士費用などが該当します。
たとえば、売却対価が3億円、取得費が1,000万円、仲介手数料が1,500万円だった場合、譲渡所得は「3億円 ー 1,000万円 ー 1,500万円 = 2億7,500万円」となります。この金額に税率をかけて税額が決まります。
取得費が不明・低い場合の対処法
中小企業のオーナーが創業時に設立した会社を売却する場合、取得費は資本金(出資額)となりますが、数十年前に設立した会社では「いくら出資したか書類がない」という状況が起こりえます。
この場合、「取得費不明」として譲渡対価の5%を取得費とするみなし取得費の規定が適用されます(所得税法第38条)。ただし、これはあくまで最低限の救済措置であり、実際の取得費が5%より大きければ実額を用いたほうが税負担は少なくなります。古い登記書類や当時の銀行振込記録、株主総会議事録などを丁寧に探してみる価値は十分あります。
仲介手数料・弁護士費用は譲渡費用に算入できるか
M&A仲介会社への成功報酬やFAフィー、弁護士・税理士への報酬は、株式譲渡に直接要した費用として「譲渡費用」に算入できます。これらを計上するだけで課税所得を圧縮できるため、支払った費用の領収書や請求書は必ず保管しておいてください。
一方で、売却前の事業整理費用や日常の顧問報酬は譲渡費用には含まれません。何が算入できるかは税理士とともに精査することをおすすめします。
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申告分離課税の税率と税額シミュレーション
税率20.315%の内訳
株式の譲渡所得に対する税率は、2026年現在、一律20.315%です。内訳は以下のとおりです。
- 所得税:15%
- 復興特別所得税:0.315%(所得税額の2.1%)
- 住民税:5%
合計で約20%強という水準は、給与所得などに課される累進税率(最高45%)と比べると大きく低くなっています。これがM&Aによる株式売却を選好する大きな理由の一つです。事業譲渡は法人税がかかり、個人への分配にはさらに所得税がかかるため、トータルの税負担は株式譲渡より重くなる傾向があります。
税額シミュレーション
実際の数字で確認しましょう。
- 売却対価:2億円
- 取得費(創業時出資):500万円
- 譲渡費用(仲介手数料等):1,200万円
- 課税譲渡所得:2億円 ー 500万円 ー 1,200万円 = 1億8,300万円
- 税額:1億8,300万円 × 20.315% = 約3,717万円
手取りは約1億6,283万円となります。2億円の売却でも税金が約3,700万円かかる計算です。この金額を事前に把握して資金計画を立てておくことは非常に重要です。
住民税の納付タイミングに注意
所得税は確定申告時(翌年3月15日まで)に納付しますが、住民税は確定申告後に市区町村から送られてくる納税通知書に基づいて、翌年6月以降に分割または一括で納付します。所得税と住民税の納付タイミングが異なるため、売却益を受け取った直後に全額使い切ってしまうと住民税の支払いに窮する事態になりかねません。売却後は売却益の約20%を「税金用」として確保しておくことを強くお勧めします。
確定申告の手続きと申告期限
📋 確定申告の手続きと申告期限の流れ
申告期限と納付期限
株式譲渡所得の確定申告は、売却が完了した年の翌年2月16日から3月15日の間に行います。売却が2026年中であれば、2027年3月15日が申告・納付の期限となります。
期限を過ぎると「無申告加算税」(本来の税額の15〜20%相当)や「延滞税」が課されます。M&Aクロージングから申告期限まで数カ月の余裕がある場合も多いですが、書類収集に時間がかかることも多いので、クロージング後すぐに準備を始めるのが賢明です。
確定申告に必要な書類5点
M&Aによる株式譲渡の確定申告で必要となる主な書類は以下の5点です。
-
株式譲渡契約書(SPA)のコピー
売却対価・譲渡条件が記載された最終契約書。譲渡所得の根拠書類として必須です。 -
株式取得費を証明する書類
設立時の定款・登記謄本、出資時の払込証明書や銀行振込明細など。取得費を実額で計上するために必要です。書類が残っていない場合は、みなし取得費(5%)適用の説明を申告書に付記します。 -
譲渡費用の領収書・請求書
仲介手数料、FA報酬、弁護士・司法書士費用など、株式譲渡に直接かかった費用の証憑。費用を譲渡所得から控除するために必要です。 -
株主名簿・株券(電子株主名簿)
誰が何株を保有していたかを示す書類。複数の株主がいる場合は各人が個別に申告するため、持株比率の確認に使います。 -
確定申告書(第三表・分離課税用)
株式等の譲渡所得は確定申告書Bの「第三表(分離課税用)」に記入します。e-Taxを利用する場合はマイナンバーカードまたはID・パスワードが必要です。
これら5点に加えて、アーンアウト(追加対価)の条件が成就した場合は、その金額を証明する書類も必要になります。クロージング後も書類の整理を怠らないようにしましょう。
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M&A売却後の確定申告でよくある失敗事例
実務では、以下のような失敗が散見されます。事前に把握しておくことでリスクを回避できます。
失敗例1:取得費の計上漏れ・過少計上
「自分の会社だから取得費なんてわからない」と諦めて、安易にみなし取得費(5%)を適用してしまうケースがあります。創業後に増資している場合や、株式を相続・贈与で取得した場合など、実際の取得費が5%を上回るケースも多くあります。特に増資履歴がある会社では払込総額が取得費となるため、登記変更履歴や定時株主総会の議事録を丁寧に確認することが大切です。
失敗例2:仲介手数料の計上忘れ
M&A仲介会社への成功報酬は売却対価の3〜5%に上ることもあり、数千万円規模になる場合もあります。これを譲渡費用として申告書に計上し忘れるケースが意外と多く見られます。仲介会社から発行される請求書・領収書は必ず保管し、申告時に確認してください。
失敗例3:役員退職金との混同
M&Aのタイミングで自社から役員退職金を受け取るケースは多いです。役員退職金は退職所得として申告分離課税が適用されますが、株式譲渡所得とは別の所得区分です。両者を混同して計算してしまうと、税額が大きく変わる可能性があります。それぞれの所得を分けて正確に申告することが必要です。
失敗例4:アーンアウト対価の申告漏れ
アーンアウト条項によって後払いで受け取る追加対価は、実際に受け取った年の収入として申告する必要があります。「すでに一度申告したから終わり」と思い込み、追加対価の申告を忘れるケースがあります。アーンアウトが複数年にわたる場合は、毎年の確定申告で計上が必要です。
失敗例5:住民税の納付資金を使い切ってしまう
前述のとおり、住民税(5%)は翌年6月以降に納付します。売却後すぐに不動産購入や事業投資に資金を充ててしまい、住民税の支払い時に資金不足になるケースがあります。売却益の約20%(所得税分と住民税分の合計)は必ず別口座などで確保しておくことを強くおすすめします。
税理士への依頼タイミングと費用目安
「確定申告なら自分でできるかも」と思う方もいるかもしれませんが、M&Aに関わる税務は複雑です。特に以下のような状況では、M&A税務に詳しい税理士への依頼を強くお勧めします。
- 取得費の計算が複雑(複数回の増資、相続・贈与での株式取得など)
- 役員退職金と株式譲渡が同年に発生している
- アーンアウト条項がある
- 売却対価が数億円規模に及ぶ
- 複数の株主がいる(家族間での持株分散など)
費用の目安としては、シンプルな株式譲渡の確定申告であれば10万〜20万円程度が相場ですが、複雑なスキームや税額が大きい案件では30万〜50万円以上になることもあります。数千万円単位の税額が絡む申告であれば、報酬はコストではなくリスクヘッジへの投資と考えるべきでしょう。
また、依頼するタイミングはできるだけ早い方が良いです。理想はM&Aクロージング前から相談を始めることで、役員退職金の設定額や支払い時期など、節税効果を高める選択肢を事前に検討できます。クロージング後に慌てて相談しても、打てる手が限られてしまうことがあります。
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確定申告前に確認したい節税ポイント
確定申告の前に、見落としがちな節税の余地も確認しておきましょう。
損益通算の活用
同じ年に他の株式投資で損失が出ている場合、その損失とM&A株式譲渡の利益を「損益通算」することができます。売却益から損失分を差し引いた金額が課税所得となるため、他に保有している株式の状況も確認してみてください。
繰越控除の確認
前年以前3年間で株式投資の損失が出ており、損失の繰越申告をしていた場合は、その繰越損失を当年の株式譲渡益と相殺することができます。過去の確定申告書を確認し、繰越損失がないかチェックしましょう。
ふるさと納税・医療費控除との関係
M&A売却益が発生した年は所得が大幅に増えるため、ふるさと納税の控除上限額も大きく上がります。売却年のふるさと納税は例年より多く活用できる可能性があります。ただし、住民税の確定申告による計算と複合するため、税理士に上限額を計算してもらうことをおすすめします。
まとめ:M&A売却後の確定申告は早めの準備が鉄則
M&Aによる株式譲渡後の確定申告について、要点を整理します。
- 株式譲渡所得は申告分離課税で税率は20.315%(所得税・復興税・住民税の合計)
- 譲渡所得 = 譲渡対価 ー 取得費 ー 譲渡費用(仲介手数料等を忘れずに算入)
- 申告期限は売却翌年の3月15日。住民税の納付は翌年6月以降
- 必要書類5点:株式譲渡契約書・取得費証明書類・譲渡費用領収書・株主名簿・確定申告書(第三表)
- よくある失敗:取得費・手数料の計上漏れ、住民税の資金確保忘れ、アーンアウト対価の申告漏れ
- 複雑な案件はM&A税務に詳しい税理士へ、できればクロージング前から相談を
M&Aによる売却は、長年育ててきた会社を次のステージへと渡す大きな決断です。その後の確定申告まで含めて完遂して初めて、売却が「成功」と言えます。税務処理を後回しにせず、早めに準備を進めることが、余計な負担やリスクを避ける最善策です。
何から始めればよいかわからない場合は、まずM&A税務の経験が豊富な税理士に無料相談することをおすすめします。

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