クリニック売却の相場はいくら?|医院M&Aの流れ・費用・成功のポイント【2026年版】

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「後継者がいないので、クリニックを売りたい」「60代になり、そろそろ引退を考えている」——そんな悩みを抱える医師・歯科医師が急増しています。

実は、クリニック・医院のM&Aは近年急速に件数が増えており、M&Aアドバイザーとして現場に関わってきた私自身も、ここ数年で医療系案件の相談が格段に増えたと実感しています。10年以上のM&A実務の中で、医療系は「特殊な配慮が最も多い領域」の一つです。患者さんの命に関わる事業だからこそ、一般企業の売却とは異なる視点と段取りが求められます。

本記事では、クリニック・医院のM&Aにおける売却相場の目安、手続きの流れ、税務の基本、そして成功のポイントを実務経験をもとに詳しく解説します。

目次

なぜ今、クリニック・医院のM&Aが増えているのか

厚生労働省のデータによると、開業医の平均年齢は年々上昇しており、50代後半〜60代が最多を占める状況が続いています。後継者不在に悩む医師が多い一方、開業を希望する若手医師・歯科医師も増えており、双方のニーズが合致する形でM&Aが普及しています。

また、コロナ禍を経て医療機関の経営環境が厳しさを増したことも背景の一つです。患者数の減少、医療資材の高騰、スタッフ採用難——こうした課題に直面した院長が、廃院ではなくM&Aによる事業継続を選ぶケースが目立ちます。

M&Aが「廃院」より選ばれる理由

  • 患者・スタッフへの影響を最小限に抑えられる
  • 売却益として資産を確保できる
  • 承継後も非常勤として関与できる場合がある
  • 地域医療への貢献が継続できる
  • 廃院に比べて手続きの負担が少ない場合がある

クリニック・医院M&Aの売却相場

クリニックの売却価格は、業種・規模・収益性によって大きく異なります。ただし、目安として以下の考え方で算定されることが一般的です。

個人クリニック(個人事業主)の相場

個人経営のクリニックの場合、事業譲渡(のれん譲渡)が主な手法です。評価の中心は「のれん(営業権)」で、以下の式がよく使われます。

のれん = 院長報酬控除後の年間利益 × 1〜3年分

たとえば、年間売上1億円・院長報酬差引後の利益が3,000万円のクリニックなら、のれんは3,000万〜9,000万円程度が相場感です。これに医療機器・内装の簿価評価を加えた金額が最終的な売却価格になります。立地の希少性や患者数の安定性が高い場合は、のれん倍率が上振れするケースもあります。

医療法人の相場

医療法人の場合は、純資産価値と収益力の両面から評価されます。EBITDA倍率は一般的に3〜6倍程度で取引されることが多く、歯科・眼科・皮膚科など自由診療比率の高い科目では高い評価を受ける傾向があります。

診療科 売却相場の目安 評価のポイント
歯科医院 3,000万〜1億円 患者単価高め、技術承継が課題
内科クリニック 3,000万〜8,000万円 患者数・収益の安定性が評価される
眼科・皮膚科 5,000万〜1.5億円 自由診療比率が高いほど評価上昇
整形外科・リハビリ 4,000万〜1.2億円 設備・スタッフ体制が重要
精神科・心療内科 2,000万〜6,000万円 患者の継続性・処方管理体制が鍵
小児科 2,000万〜5,000万円 地域密着度・院長の人柄が評価される

売却相場を左右する主な要因

同じ診療科でも、以下の要素によって評価額は大きく変わります。

  • 立地条件:駅近・人口増加エリアは評価が高い。過疎地は割引要因になる場合も
  • 電子カルテ・設備の状態:最新設備は加点、老朽化設備は減点または引き継ぎ交渉の対象に
  • スタッフの安定性:看護師・受付スタッフの定着率が高いほど評価アップ
  • 自由診療の比率:保険診療だけでなく自費診療があると収益の上限が広がり、評価に好影響
  • 院長依存度:院長なしでも一定程度回せる体制があると、リスク軽減として評価される

個人クリニックと医療法人の違い:M&Aの手法

クリニックのM&Aを考えるうえで、まず「個人クリニック(個人事業主)」か「医療法人」かを明確にする必要があります。手法がまったく異なるからです。

個人クリニック(事業譲渡)

個人クリニックは法人格を持たないため、患者カルテ・スタッフ・リース・医療機器などを一括して引き渡す「事業譲渡」が一般的です。

重要な注意点として、医療行為を行うには医師免許が必須なため、買い手も必ず医師(または医療法人)でなければなりません。これが一般事業のM&Aと大きく異なる点です。また、個人クリニックの事業譲渡では、既存の保険医療機関の指定は引き継げず、買い手が新たに保険医療機関の申請を行う必要があります。この手続きに数週間〜数ヶ月かかることも念頭に置いておきましょう。

医療法人(持分譲渡・支配権移転)

「持分あり医療法人」であれば出資持分を譲渡する形でM&Aが可能です。ただし2007年以降に設立された法人は「持分なし医療法人」が原則で、この場合は理事交代による実質的な支配権移転という形をとります。

医療法人のM&Aは法律的に複雑なため、医療に詳しいM&A仲介会社や法律事務所を選ぶことが非常に重要です。都道府県の医療法人認可変更手続きも発生するため、専門家なしで進めることは現実的ではありません。

クリニック・医院M&Aの流れ(全7ステップ)

クリニックのM&Aは、一般的な中小企業M&Aの流れと大きくは変わりませんが、医療特有の手続きが加わります。

ステップ1:相談・秘密保持契約(NDA)

まずM&A仲介会社またはFAに相談します。相談段階では秘密保持契約(NDA)を締結し、情報が外部に漏れないようにします。スタッフや患者への影響を考えると、情報管理はとりわけ慎重に行う必要があります。複数社に相談する場合も、それぞれとNDAを締結してから情報開示するのが原則です。

ステップ2:企業価値の算定・売却価格の設定

財務資料(決算書3期分)・診療実績・患者数・スタッフ構成などをもとに企業価値を算定します。売却希望価格と市場価格にギャップがある場合は、仲介会社と相談しながら調整します。「高く売りたい」という気持ちは当然ですが、相場から大きく乖離した希望価格は買い手探しを長期化させる原因になります。

ステップ3:買い手候補へのアプローチ(ノンネームシート)

クリニック名を伏せた「ノンネームシート」を作成し、買い手候補にアプローチします。医療系M&Aでは、買い手は医師・医療法人・医療系グループが中心です。一般企業の買い手とは異なり、買い手自身も医師免許を持つか、医師を雇用している必要があります。

ステップ4:トップ面談・条件交渉

候補が絞られたら、院長同士のトップ面談を実施します。引き継ぎ期間の長さ、スタッフの処遇、患者への説明タイミングなど、医療特有の事項を丁寧に協議します。診療方針・患者対応へのスタンスについても、この段階でしっかり確認しておくことが、クロージング後のトラブル防止につながります。

ステップ5:基本合意書(LOI)の締結

条件が概ね合意したら、基本合意書(LOI)を締結します。ここで独占交渉権が発生し、他の候補との交渉が停止されます。LOIには価格だけでなく、引き継ぎ期間・スタッフ雇用継続・非常勤継続の有無なども明記しておくとトラブルを防げます。

ステップ6:デューデリジェンス(DD)

買い手が財務・法務・税務・医療コンプライアンス面を詳細に調査します。医療DDでは、診療報酬の請求状況・保険医登録・医師・スタッフの資格確認なども対象になります。不正請求の疑いがあると破談になるケースもあるため、事前に自主点検しておくことをおすすめします。電子カルテの管理状況や、過去の行政指導の有無なども確認対象になります。

ステップ7:最終契約・クロージング・行政手続き

DDの結果を踏まえて最終条件を確定し、最終契約を締結します。クロージング後は、患者やスタッフへの引き継ぎに加え、保険医療機関の指定変更・医療法人認可変更などの行政手続きが発生します。これらの手続きは都道府県によって処理期間が異なるため、スケジュールに余裕をもって進めることが重要です。

クリニックM&Aに関わる税務の基本

売却価格が高くなるほど、税務への対処が重要になります。ここでは最低限押さえておきたいポイントを整理します。

個人クリニック(事業譲渡)の場合

個人クリニックの事業譲渡で得た「のれん代」は、原則として総合課税の対象となる事業所得として課税されます。所得税・住民税・国民健康保険料の合算で、実効税率が50〜55%に達するケースもあるため、事前の税務シミュレーションが欠かせません。医療法人化してから売却するという選択肢が税務上有利になる場合もあり、5年以上の準備期間があるなら専門家と検討する価値があります。

医療法人(持分譲渡)の場合

持分譲渡の場合は、出資持分の取得価額と売却価額の差額が譲渡所得となり、分離課税(所得税・住民税合計で約20%)が適用されます。個人の事業譲渡と比較して税負担が軽くなるケースが多く、医療法人化のメリットの一つと言えます。ただし「持分なし医療法人」の場合は譲渡所得課税が発生しないため、別途専門家に確認が必要です。

売却を成功させる5つのポイント

1. 早めに動く(3〜5年前から準備)

クリニックのM&Aは、一般的に6ヶ月〜2年かかります。「70歳になったら引退」と決めているなら、65〜67歳頃から準備を始めるのが理想です。焦って進めると条件が悪化しやすいため、時間的余裕が結果を左右します。早期に動くことで、医療法人化や収益改善など売却価格を高めるための施策も実行できます。

2. 収益性を高めてから売る

売却価格はほぼ収益性で決まります。売却を決意したら、まず収益改善に取り組みましょう。自由診療の比率を上げる、不採算診療を見直す、スタッフ効率を改善するといった施策が評価アップに直結します。逆に、売却直前に収益が落ちると、交渉力が大幅に低下します。

3. スタッフの定着率を上げる

買い手が最も懸念するのは「引き継ぎ後にスタッフが辞めてしまうこと」です。看護師・受付スタッフの定着率が高いクリニックは、それだけで評価が上がります。売却前に職場環境の整備・待遇改善に取り組んでおくと、買い手への印象も大きく変わります。

4. カルテ・医療記録の整備

デューデリジェンスでは、診療録(カルテ)の管理状況も確認されます。電子カルテの導入・整備が進んでいるクリニックは、DDがスムーズに進む傾向があります。紙カルテのみの場合、電子化を進めておくと買い手に対する説明コストが下がり、好印象につながります。

5. 医療系M&Aに強い仲介会社を選ぶ

医療M&Aには、保険医療機関の指定承継・医療法人の認可変更など、一般M&Aとは異なる手続きが必要です。医療に精通したM&A仲介会社を選ぶことが成功の近道です。複数社に相談して、担当者の医療知識・過去の実績・仲介手数料の体系を比較したうえで選定しましょう。

よくある失敗パターン

情報漏洩でスタッフが動揺・離職

M&Aの話が院内に漏れ、スタッフが不安になって退職するケースがあります。特にクリニックは人員体制が小さいため、一人の退職が大きな打撃になります。情報管理を徹底し、スタッフへの告知タイミングは慎重に設計しましょう。一般的には最終契約の直前〜クロージング後に告知するケースが多いですが、タイミングは案件ごとに異なります。

売却価格への過大な期待

「20年頑張ってきたから高く売れるはず」という期待が、交渉を難しくするケースがあります。市場価格をしっかり把握したうえで交渉に臨むことが重要です。希望価格と相場価格の乖離を早めに認識することが、スムーズな成約につながります。仲介会社が提示する査定額は「売れる可能性が高い価格帯」として参考にしましょう。

買い手の医療方針とのミスマッチ

「この患者さんを守りたい」という思いが強い院長ほど、買い手の人柄・診療方針を重視しています。価格だけで判断せず、承継後の診療スタイルや患者対応の方針をしっかり確認しましょう。トップ面談での対話が、長期的な成功を左右します。

引き継ぎ期間が短すぎて承継失敗

「早く楽になりたい」という気持ちから、引き継ぎ期間を短く設定しすぎると、患者が新院長に馴染めないまま離脱するリスクがあります。一般的に3〜6ヶ月、場合によっては1年程度の並走期間を設けることが、患者・スタッフ双方にとって望ましいとされています。

クリニックM&Aに関するよくある質問(FAQ)

Q. 赤字のクリニックでも売却できますか?

A. 赤字でも売却できるケースはあります。特に立地が良く、患者数が一定数ある場合は、買い手が経営改善できると判断すれば成約に至ることがあります。ただし、赤字が続いている場合は売却価格が大きく下がる、もしくは買い手が見つかりにくいことも事実です。早めに相談し、まず収益改善に取り組んだうえで売却を検討するのが理想です。

Q. 個人クリニックのままで売却できますか?医療法人化は必須ですか?

A. 個人クリニックのままでも事業譲渡という形でM&Aは可能です。医療法人化は必須ではありません。ただし、医療法人化しているほうが税務上有利なケースや、買い手が医療法人を希望するケースもあります。どちらが有利かは個別の状況によるため、専門家に相談してシミュレーションを行うことをおすすめします。

Q. 売却後も非常勤として働けますか?

A. 可能です。売却後も非常勤として一定期間クリニックに関与するケースは多く、引き継ぎのスムーズさや患者の安心感という観点から、買い手側からも歓迎されることがあります。ただし、勤務条件(日数・報酬・期間)は契約書に明確に記載しておくことが重要です。

Q. 仲介手数料はどのくらいかかりますか?

A. 仲介会社によって異なりますが、売却価格の3〜5%程度が一般的です。最低手数料が設定されていることも多く(200万〜500万円程度)、小規模クリニックでは割合が高くなる場合があります。着手金・中間金・成功報酬の構成も会社によって異なるため、複数社を比較したうえで選定しましょう。

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まとめ:クリニックM&Aは「準備」と「相手選び」が9割

クリニック・医院のM&Aは、適切な準備と信頼できるパートナー選びで結果が大きく変わります。廃院では患者もスタッフも失ってしまいますが、M&Aなら地域医療を守りながら、院長自身が人生の次のステージへ進むことができます。

売却相場の目安を把握し、個人クリニックと医療法人で手法が異なることを理解し、税務面の準備も含めて早期に動くこと。これが、クリニックM&Aを成功させるうえでの最大のポイントです。

「まだ先の話」と思っていても、準備は早ければ早いほど有利です。まずはM&A仲介会社への無料相談から始めることをおすすめします。

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この記事を書いた人

M&A仲介実務10年、累計成約60件超。元大手仲介会社シニアアドバイザー。
「経営者の人生に寄り添う」をモットーに、中小企業の事業承継からIPO準備企業のバイアウトまで幅広く支援。業界特化型M&Aに強み。表面的な価格算定だけでなく、オーナー経営者の売却後の資産設計・ライフプランまで見据えた戦略提案を得意とする。

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